新しいシステムに移行するため、旧いデータの一部を手作業で移し替える。動作自体に問題はないようだ。昼は質素なスパゲティ。おやつはしっとり美味なるバウムクーヘン。デザインの修正指示を書き入れたシートを新人に渡して、次の作業工程を説明する。
武蔵美に自分のMacBookを持ち込んで、学生がつくった書体をフォント化していく。出来上がったフォントファイルを本人に渡し、Illustratorで試し打ちしてもらう。学生の顔が輝く。タイピングすると、自分のつくった書体が画面の上でことばになる。その同期性には、いまでもしびれる。講評会は来週金曜に設定した。今年も見どころのあるユニークな書体がいろいろ並びそうだ。
大学時代の恩師に会いに行く。同級生が持参した25年前の先生の作品と詩書画の共作をまぶしく眺める。痩雲こと片岡修先生の書と俳句に感嘆しきり。「山門の仁王に挑む蝉しぐれ」は磯田先生の作だったか。デザインの埒外にあって溌剌とする、一回性の表現が持つ強さ。
墨痕にドヤ顔みたる晩夏かな 茶門
複数の書体ファミリーをどう関係づけるか、チャートを眺め回して想を練る。気分転換するため池袋を散策。サンシャイン通りでサンバのカーニバルに巻き込まれる。
ベトナム風フォーを食べてから仕事場へ。漢字を出力してデザインチェック。赤を入れ出すと切りがないのだが、この書体の出来がのちのち大きな意味を持ってくるはずなので、できるかぎりしっかり作っておきたい。
できあがった試作フォントを先方に送付して、コメントを待つ。そのあいだに開発中フォントの漢字を見なおし、品質を上げるための赤入れ作業。まだ良くなる。午後から次期開発書体の仕様について議論する。想定ユーザーと用途をもう少し明確にする必要がありそうだ。
意のままに操れる道具で闊達自在な書体をつくり、なめらかな開発工程でエラーのないフォントを生成する。これはもちろん理想の話。悪戦苦闘の歴史は続く。
最善の状態でフォントをリリースしたつもりでも、改善すべき点は必ずどこかに残っている。仮に、書体のデザインに問題がないとしても、仕様が変わり、技術が変わり、媒体が変われば、対応すべき新たな課題が発生する。書体という息の長い素材の作り手として、継続性を重視する理由はそこにある。
昨晩のうちに学生から預かっていたデータをフォント化し、今朝は会社で仕事をしてから武蔵美へ向かう。木漏れ日を反射して流れる玉川上水と、たどたどしいけど真っすぐな学生たちはどこか似ている。のどを痛めてから食べてなかった冷やし担々麺を解禁。やはり美味い。午後から新規の打ち合わせ。
小塚さんと久しぶりに長電話。歳を聞かれて、「47になりました」と答えると、「いやぁこれからだねぇ鈴木君、ぼくがその気になって仕事を始めたのはその歳くらいからだよ」と85歳の小塚さんに言われると、たしかにこれからだなと思えてくる。午前中は書体制作に集中、午後から都市フォント原稿の加筆修正をおこなう。