石神井川の桜があまりに美しいので、用事をひとつスルーして花見気分を味わうことにした。小型の卓と椅子を持参して腰掛ける中国人グループと、地べたに座る日本人グループ。むろん食べ物も異なる。北京ではそろそろ柳絮の舞う季節だろうか。文化のみなもとは景物にあり。
外部案件の平仮名デザイン、二通りの試作がおおむね完成した。ここから先は依頼者の意見を取り入れながら改訂していくことになるだろう。昼は自宅でふわとろたこ焼き、夜は手羽唐。
書体デザイナーとして新入社員が一名入社した。きょうは初日のレクチャー二つとネットワーク関連の設定。残りの時間でアウトラインの整形作業をやらせてみる。夕方から武蔵美の全体会議で新宿へ。
書体のアイデアについて可否の判断を下しにくいのは、試作した文字の品質がよほど高くないと筋の良し悪しが分からない場合が多いからである。アイデアは変わらないのに、文字を磨いていく過程でふいに目の前が開けるようなことがよくある。この経験は、幼いとき夢中になった泥だんごづくりに似ていなくもない。向かいの鋳物屋さんの土でつくった泥だんごはとくに美しく、親があきれるほど磨いて、半透明になった球体をためつすがめつ眺めたものだ。磨けば玉、磨かねば土塊(つちくれ)。
いま試作している書体を極端な方向に推し進めていくと、あるフォントに近づいていくことが分かってきた。玄人筋が一顧だにしないフォントだが、意欲的な取り組みをしていたんだなと今さらながらにして思う。
五年前お蔵入りにした試作書体を元にデザインを展開する。一気に極端な形にもっていくのは難しいので、常識的な文字形態との距離を測りながら、離れては戻しを繰り返す。足がかりになるデザインが出来たら、そこからもういちど跳び上がれないか試すつもり。
以前から温めていた書体ファミリーのアイデアを今回の案件で実現できないか試してみたところ、ぜんぜんうまくいかなかった。一方、新人に書かせていた書体の習作がいい感じになってきた。こちらは次の段階に進められそうだ。
来月から制作に入る外部案件の書体スケッチ。このカテゴリーで使いやすいフォントをつくるのは容易ではないが、うまくいけば価値ある取り組みになる。および腰にならず、最初は極端なところから攻めてみたい。
新人用の机を入れるため、私が使っている作業机をセットバックした。単なる後退ではあきたらず、机と本棚の配置をいろいろ変えてみた結果、部屋の角に机を密着させるもっともコンパクトなかたちに落ち着いた。引き続き本と資料の整理にあたる。
ひとつ仕事の区切りがついたので、新年度に向けて書類の整理をおこなう。問題は本だ。周囲に置き場がなく、二階の図書室はすでに満杯で、机や棚からあふれた本の行き場が見あたらない。くりかえし読んで並べて使ってこその本。仕舞い込んでしまったらそれこそお仕舞いだ。本とのつきあいは読み終えてから始まる。