試作を開始してから三週間、ひらがな五十音が完成した。この方向のデザインに脈があるかどうかを調べるという所期の目的は果たせたので、ここでいったん切りあげることにする。無理筋のアイデアかと思っていたが、実用性と審美性の両面で、及第点以上のものができそうだ。

脈絡のありなし、抑揚のあるなしについてひと通りの組合わせパターンをつくってみて、新人デザイナーの意見も参考にしながら、この書体ならではの理想型を絞り込んでいく。きょうの作業でかなり違和感を低減できたように思う。

ツールに関する細かなやり取り。使い方だけでなく、ファイル名称も含め分かりやすさを徹底する。なにはさておき、簡単に使えるのは確かな長所といえるだろう。昼は粗食、夜は和食。

試作中の仮名をじっくり眺める。いくつか改善点が見つかったので、印字物に直接ペンを入れていく。まとまりに欠ける字に筆脈を足したら一発で自然な顔つきになった。文字に蓄積されている形態記憶の恩恵と桎梏の重さを二つながらして思う。手習い的な書体スケッチを少々。

まるまると椿咲きをる夕間暮    茶門

ふつうの高校生のふるまいとはいえ、ことばを交わすのはもちろん顔を合わせるのも嫌というあからさまな態度には参る。そうだよな、自分もそうだったよなと分かっているつもりでも、息子と関係がぎくしゃくするのがこんなにかなしいことだとは思わなかった。

『漫勉』五十嵐大介の回を食い入るように観る。最初に『SARU』を読んだときはほんとにおどろいた。こんな壮大な物語を描く漫画家がいたんだって。『海獣の子供』も、漫画なんだけど、漫画でしか表現できない内容なんだけど、僕の知っているどの漫画ともちがっていてどきどきした。

ゆきつもどりつしながらひらがなをつくる。矛盾を許容するか、するとしたらどのていどまで許容するか、迷いはつきない。夕方から新宿へ。武蔵美の謝恩会に出席。この大学で非常勤講師になって四年、最初の卒業生となる。

来月は、新規案件のキックオフと自社製品の大詰め、そして大学の授業開始といろいろ慌ただしくなりそう。それまでになんとか切りのいいところまで仮名を進めておきたい。試作の時間は意図的につくり出さないといけないし、それだけに大事に扱わないといけない。でないと必ずどこかで行き詰まり、その先いずれ煮詰まってしまう。頭脳や技能の面よりも気持の面で。

書法の一貫性に悩む。この作り方では「あ」と「め」が同じにならない。参照すべき同じカテゴリーの書体がないため、字形を落ち着かせるまでにひと苦労である。

蛍光管の買い出しと交換。ひらがなの試作を進める。作り足した文字のでき具合を見るのは、帰宅してからのお楽しみ。文字が増えると組める文章の幅が広がるのがうれしいところ。書体デザインをやっていると、言葉を文字であらわすというささいなことを新鮮に感じる瞬間が少なくない。

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