午後から対談。編集者が話したくてうずうずしているのが伝わってきて可愛らしかった。編集者・対談相手・わたし、三者それぞれガチで初対面。盛り上がった。盛り沢山すぎて、どんな原稿になるのか見当もつかない。ライターさん泣かせの対談だったと思う。

新人がつくった漢字に厳しめの赤入れ。着実に見る目を養ってほしい。懸案の目処が立たず、長めの定例ミーティング。

あさっての対談の主題についてぼんやり考えていたら、ふと『春と修羅』のことを思い出した。現象と幻想、風景と予兆、明滅と結像、変容と即興。まとまりのないふわふわとした連想にすぎないが、文字の将来を考える上で、なんらかの手がかりを暗示しているように感じられた。電子活字は心象スケッチを写すことができるだろうか。かつてアラン・ケイは、ファンタジー増幅装置としてパーソナルコンピュータの基本概念を提示したものだった。

表参道のポール スミス・ギャラリーで開かれている『TYPE FROM LONDON』展へ。木活字の刷り物から古き良きロンドンが香る。その足で銀座に向かい、GGG『セミトランスペアレント・デザイン 退屈』展へ。前者はスタイルとテイストを重んじ、後者はスタイルとテイストを排除したアルゴリズムによる視覚表現。帰りに寄ったニューバランスの店舗で柔道家の棟田選手を見て、ひとり静かに興奮した。

次のステップに向けて必要な準備を少しずつ。文言を推敲したことで焦点が定まってきた。派手でなくても芯のある成長を目指したい。きょうの主な仕事は、問い合わせ対応と漢字制作。

紙を排出するときに異音がするため、OKIプリンタの出張修理を依頼した。即日で調整完了。5年保証は頼もしい。一方。某ソフトウェアのインストール時に不具合があり、弊社エンジニアが、丸半日メーカーのサポートにたらい回しにされた挙げ句、呆然とするような解決策を示された。ハードウェアメーカーとソフトウェアメーカーの対応の違いがことさら際立った一日。

無難な案を選ぶか、挑戦的な案を選ぶかについて議論する。無難な選択に開発という言葉は似合わないし、新しいものを世の中に出すということは、なにかしら挑戦にあたる部分があるはずだ。可否の検討は必要だが、挑発的であることを理由に後者にしましょうという声が上がったのは、まずは価値ある判断と言える。

開発中フォントの詰めデータを印字物で確認する。制約がデザインを磨くという言説をときどき見かけるが、こと日本語フォントに関して言えば、仕様に関する制約の多くは、書体デザインの可能性を狭めている。仕様だけの問題ではなく、アプリケーションやラスタライザが対応しなければ解決できないということは分かっているし、いたずらに手をこまねいているわけではないのだが、歯ぎしりし続けて二十年というのは、いかにも長すぎる。

メンチカツを食べながら読書遍歴について語り合う。ハードボイルドを経由して辿り着いた船戸与一は最高だった。私のなかで船戸冒険活劇と五味剣豪小説は、その乾き具合と疼き具合において通じるところがある。つまりは痺れる読み物であるということ。野郎は読むべし疼くべし。

息子が作ってくれた月見うどんを食べて仕事場へ。漢字制作の手を止めて、朝倉さやさんの歌声に聴き入る。民謡日本一の歌唱力は伊達じゃない。『楓』も『ルビーの指環』も『あなたに逢いたくて』もほんとにいい。

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