午前中は漢字制作、午後から定例ミーティング、諸々打ち合わせなど。慌ただしく過ぎるなかにも、それぞれ意味のある事柄だけに、張りのある時間だと感じられる。就寝前に柔軟体操と腕立て伏せをやって体調維持につとめる。

『情熱大陸』を観ていると、作り手としてもっとも刺激を受けるのは、料理人である場合が多い。食という人間の本性にかかわる職業だけに、生半可な取り組みではお客さんを喜ばせることはできない。まっすぐな好奇心、ひたむきな探究心、むきだしの闘争心など、自分の及ばなさ加減を知る格好の対象でもある。

『テクニウム』を読み終えて、午後から書体制作。テクノロジーと人は、さらに共生の度合いを深めていくのはまちがいないが、人間以外の生き物にとっては迷惑な話だろう。平行して読みはじめた『バイオフィリア』のめくるめく生態系のなかに、テクノロジーの居場所を見つけるのはむずかしい。人間と共存しつつ、さらには自律的な振るまいを目指す機械に、多様な生物との共生は可能だろうか。人のからだはたやすく土に還っても、からだに埋め込まれたチップは食べ残されそうだ。微生物に好まれる素材を選ぶか、分解するナノテクを駆使するか。その気にさえなればハードルは高くない。「自律」の意味はそこにある。自然からの要請はないだろうから。

目指してきた方向はこれで良かったんだなと思える出来事が少しずつ増えている。準備万端とはいえないが、さまざまな要望に応える用意は整いつつある。今後さらなる蓄積と研鑽に努め、応用と革新に至る道すじを明らかにしていきたい。

午前中にスケジュールの詳細について打ち合わせをおこなう。師走に向けて慌ただしくなってきた。半日漢字制作。

ここからがほんとの勝負。ずっとそう思ってやってきたけど、このさき打つ手の一つひとつが重要すぎて心がふるえる。仕込みと仕組みが連動しなければ効果はうすいし、仕掛けだけでは長続きしない。

書体制作にはうってつけの雨。モニターの陰に隠れてカップ麺。文字をつくりまくる。雨はいい。

衝撃のラストからはや一ヶ月。『アルドノア・ゼロ』の多様なメディア展開を、主にグラフィックデザインの面から強力に推進した、有馬トモユキさんと瀬島卓也さんのインタビュー記事を公開した。「新しい形のコミュニケーションを設計したい」とまっすぐに語った有馬さん。「新しい王道とは、あとに続く人が出てくるということ」とさらりと言ってのけた瀬島さん。2014年に生まれたTP明朝が、2014年を舞台にしたTVアニメによって初めて多くの人の目にふれたことは、まったく想像していなかった展開だけに、私にとってはある意味衝撃のデビューであり、TP明朝にとっては、今まさに吹いている風を受けての船出となった。

インタビューのキーワードは、文句なしに「新しい王道」だろう。establishment(確立した体系)に正面から挑み、新たな例を提示しようという意気込みにおいて、大いに共感を覚えた。「新しい王道とは、あとに続く人が出てくるということ」に続く瀬島さんの言葉はこうだ。「そういう意味では、僕らのデザインが真似されるのは歓迎ですし、たくさんの人に追いかけてもらえることを願っています」

自動詞のestablishにはこんな意味がある。「植物が新しい場所に根づく、定着する」。新しい芽がたくさん育たねば、新しい風景がかたちづくられることはない。つまり、瀬島さんの発言は強がりではなく、あきらかに未来の風景に対する願望であると理解できる。

三時のおやつにバウムクーヘンとアールグレイの紅茶を頂く。ドイツとイギリスの組み合わせだが、すばらしく相性が良い。ひさしぶりに『カオスの自然学 Sensitive Chaos』を引っぱり出して読みはじめる。当方の気分がそうさせるのか、感応の度合いが非常によろしい。ダーシー・トムソンの『生物のかたち』が読みたくなってきた。ドイツロマン派と、スコットランド合理主義の食い合わせはいかに。

明け方ふわりと目が覚めて、文字のかたちと流れに関する着想を書き留める。おおかた寝るまえに読んだ本の影響だろう。午後から渋谷に出かけ、西武「廣川玉枝展 身体の系譜」を観る。キルラキルを地でいくような衣服へのアプローチ。人衣一体、生命繊維的世界観。古代と未来、西と東、手わざとテクノロジーが頭のなかを行き交う。

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