フォント生成マシンを大幅にパワーアップした。見た目もすっきり。こうしてインフラの部分が整っていくのは実に心強い。どれくらい速度の違いが出るのか楽しみだ。新しいものを生み出すためにどこを補強するかは、会社として常に大きな課題である。人と機械、技能と技術、感性と数値、デザインとエンジニアリング。相互に補完し合い、高め合うように。

夜な夜な開発中書体のデザインを確認する。不安を抑え、期待を高めるのにもっとも効果的なこの習慣は、15年前にAXIS Fontを作っていたときとなにも変わっていない。ほんの少し進歩したと思えるのは、求める書体の完成度と、使用想定シーンの広がりが増したこと。

マネージャーがまとめた2014年のビジネスレビューに目を通しつつ、タイププロジェクトの経営計画を作成する。ここ数年は、計画通り基本書体をリリースする方針に徹すると同時に、会社の財務的な基盤と組織的な骨組みを整えてきた。方向性はそのままに、明確になってきた少数の課題に焦点を絞り解決を図りたい。

午前中は欧文の出力物チェック。たらこスパを食べてから自宅を出、無人のオフィスで松山千春を熱唱しながら文字を作る。ザ・ベストテンの中継で『長い夜』を歌う松山千春の姿に、われわれ中学生は心臓をわしづかみにされたのである。そのあと出た『夜よ泣かないで』は、ヒットしなかったけど好きな曲。Sing a song, Make a kanji.

東京は朝から雪。きょうは山下達郎を聴きながら文字を作る。からっとした曲が多いので寒さが増すような気がするけど、ノリが良くて制作がはかどる。高校時代にいちばん聴いたアルバムはMELODIESだったな。なかでも『悲しみのJODY』は繰り返しなんども聴いたっけ。それ以降の曲ではヘロンがいい。しかしこんな雪の日に『ドーナツソング』は困る。無性に食べたくなる。チョコレートがたっぷりかかったオールドファッションが食べたくなる。

あまりに寒いので、予定をすこし変更して終日漢字制作。浜田省吾を聴きながら作りまくる。1983年のSand Castleから2005年のMy First Loveまでノンストップで流す。やっぱり『家路』の「道しるべもない道にひとり」のところはぐっとくるね。

きのうは書体のアイデンティティと開発意義について話しをし、きょうは過去のプロジェクトを別の文脈で再定義する意味について話しをする。具体的な問題意識や明確な目的意識から生じる会話には、さまざまな視点と論点が出来する。雑談は手軽な発火装置にちがいないが、問題意識という着火材がなければ火は熾きない。日ごろから着眼点に磨きをかけること。火ダネはそこらじゅうにある。

昼にベーコンとトマトのオムレツを注文して、三分の一くらい食べたところでお店の人が、「すいませーん、トマト入れ忘れちゃいましたー」と言いながら、ざっくり切った生トマトを皿に盛って現れた。口のなかでブレンドしてノープレブレム。

きのう食べたジンギスカン鍋は美味しかったなあと思いながら文字をつくる。初めて北海道でジンギスカンを食べたとき、隣りに居合わせた初老の夫婦の、惚れ惚れするような飲みっぷりもなつかしい。つぎつぎと大ジョッキが空になり、あっというまに8杯がテーブル並んだ。けっきょくその夫婦はほとんど肉には手をつけず、うちの家族で頂いたのだった。

平井和正が亡くなった。私とって平井和正は、幻魔大戦の人ではなく、圧倒的にウルフガイの作者である。中一のとき読んだ『狼の紋章』は、思春期の人格形成にかなり影響を及ぼした。平井は、石ノ森章太郎と夢枕獏にも影響を与えている。マッドマックスが北斗の拳を招来し、ジョジョへの流れをつくったように、平井原作による8マンは、サイボーグ009の導火線の役割を果たし、ウルフガイの美学がキマイラを降臨し、変化(へんげ)ものの系譜を刺激した。

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