昨年来取り組んできた重要なプロジェクトのデザインに承認が下りた。さりげない改善にとどまるものの、新しい時代のフォントに生まれ変わるはずだ。そのわずかな改善は、長い目でみれば累積的な効果につながり、広い範囲で一定以上の意味を持つことになるだろう。まだ計画が終わったわけではないが、試行錯誤した甲斐を感じられる日を今から心待ちにしている。

新人がデザインチェック時に持ってくる漢字の品質が安定してきた。書体の勘どころをつかみ始めているのだろう。制作ペースも悪くない。新人の成長は、次の展開に向けての安心材料であり、次の段階に入るための必要条件でもある。会社として成長するためには、一時的な突破力だけではなく、組織の層を厚くして、持続的な構築力を磨かなければならない。

うぐいすの遠音を聴きつつ朝食をとる。昼は蕎麦。陽の射す場所に椅子を移動させながら本を読む。穏やかな一日。

最後まで観ないかもしれないなと思いつつ観はじめた『かぐや姫の物語』。まずは絵の力で物語に引き込まれ、しだいに感情移入の度合いが高まって、物語後半ではもう涙を抑えることができなかった。ジブリ映画を繰り返し観ることはほとんどないが、このアニメーションはまたいつか思い出して観たくなるような気がしている。

午前中に目黒で対談。言語化するのがむずかしいテーマだけに、適切なことばを見つけるのに苦心する。会心のフレーズが相手の口から発せられると、にわかにその場が活気づく。対談の醍醐味はこういうライブ感にある。

夕方来客があり、新規プロジェクトのきっかけになりうる構想について相談を受ける。目指すべき理想は共有できそうだ。現実面としては、窓口を誰にするか、プラットフォームをどこに置くかという点が課題になってくるだろう。まずはかぎられた時間のなかで、何をどこまでできるか考えたい。

次の計画を実現するための準備を粛々と進める。すこし渋めのところを狙ったプロジェクト。この仕込みの面白さが分かるのは、もうひとつ先のアイデアにつながってからになるだろう。

午前中は漢字制作に集中。午後から渋谷某オフィスにて対談。二人とも奥の方や先の方に関心が向いているため、かなり気をつけていても話題が彼方へ展開してしまう。説明するのがむずかしい重要なことがらは、平易に話す工夫をどれだけしても十分ということはありえない。分かりにくさを放置する代償は意外なほど大きいものである。

直井さんと小竹さんと矢崎君が入社してもうすぐ一年になる。それぞれの個性を活かしつつ、この仕事に欠かせない忍耐力と勤勉さで日々の業務を支えてくれている。組織としての安定度が増してきた一方で、チームとしての緊張感を失わないようにしなければいけない。そのためには、まず私自身が挑戦する姿勢を保ち続け、チームを鼓舞する役目を果たさなければならない。

とぎれとぎれに本を読み、とりとめもない思いつきをノートに書きつける。最初は単なる思いつきにすぎないが、アイデアを更新し続けることで筋の良し悪しがすこしずつ見えてくる。

<< BACKNEXT >>