プロジェクタを使って新たな開発計画の概要を説明する。試作書体の図版制作を若手に任せ、諸々の準備を進める。これをPDFのスライドにまとめて、先方のチームに来週プレゼンするという段取り。まずはデザインの方向性を共有できればと思う。夕方新橋に出かけ、都市フォントがらみの懇親会に出席し、20時ごろ仕事場に戻って資料の最終チェック。

武蔵美で40分ていどのレクチャーを続けてふたつ行なう。漢字書体の変遷と書体デザインついて。10分の休憩を入れたあと、生徒が書いた筆文字を各自の素材として、主要アプリの基本的な使い方を説明しながら作品制作へと導く。1年生最初の授業であるため、何から何まで教えなければならない大変さは例年どおりで、午前中の出し尽くした感が半端でない。14時ごろ会社に戻ってプレゼンの予行演習と定例ミーティング。合間に書体デザインの確認とディレクション。

今年おそらくふたつある山場のひとつめが今週だ。乗り切れるかどうかではなく、どのように乗り越えたかが問われる重要な一里塚でもある。その成否によって次の山場が難しくもなり、楽にもなる。春の嵐、春の試練。

きょう誕生日を迎え、四度目の年男となる。次の12年でどこまでいけるか分からないが、書体開発を通じて文字の可能性を広げながら、会社の成長基盤をつくりあげていきたい。まずはこれまで以上に体力の維持促進につとめ、つねに気力を絶やさず、不足しがちな知力を養い、不断に行動力を高める必要がある。こうして書き連ねてみるといかにもたいへんだが、力まず、しかし結果にこだわらなければ、この先の成長は望めない。

来週の授業で使うPDFの資料を作成する。漢字書体の変遷を図版でダイジェスト。宿題との相乗効果を図る。漢字は、長い時間軸でデザインを考えるのに適した素材であり、いまなお日常で使用しているという点で、すぐれて身近な対象でもある。

駅のホームで石神井書林の内堀さんとばったりお会いした。お久しぶりですの挨拶も早々に、池袋に着くまで本の将来について語り合う。「文字はいいよね、動けるから」と内堀さん。いろいろな媒体を選べるぶんだけ紙の本より自由じゃないかと。なるほど。movable typeという名とは裏腹に、物理的な重さによって動きを阻まれている金属活字の現状を思い合わせずにはいられなかった。

来週木曜日に「フォントをデザインする人、フォントでデザインする人」というトークイベントで、ワイデン+ケネディ東京のディレクター 長谷川 踏太さんとご一緒することになった。打ち合わせの席で感じたのは、長谷川さんの柔らかい物腰と、ミニマムで明快な応答のコントラストである。つねにマックス(一杯いっぱい)で混線しがちな私との対比を会場にてお楽しみください。

開発ツールの改善項目をリストアップし、優先順位と担当エンジニアを決めてスケジュールに落とし込む。一つひとつの項目を着実に解決していって、理想のワークフローに近づけたい。二人の新人デザイナーが担当している書体のデザインチェックを行なう。文字サイズや文章のバリエーションなど、作業終盤での判断材料は多いほど良い。

武蔵美授業の初日。担当する1年生のクラス27人に、聴講の希望があった4年生の2人が加わることになった。文字、書体、活字、フォントって何だろうねという話から、持参してもらった雑誌、漫画、単行本を介して全員とコミュニケーションを図る。ファッション雑誌はときどき購読しているようだが、際立って人気の高いものはなく、みごとに趣味嗜好がばらけていた。Pinterestを使っている子は一人だけ。

使用しているSNSについて挙手してもらったら、LINEは9割以上の学生が、Twitterは6割から7割くらい、Facebookは3割ていどの使用率だった。少しおどろいたのは、6割以上の学生がiPhoneユーザーであるにも関わらず、Mac経験者 (1年生) が一人だけだったこと。スマホでだいたい事足りるという意識および生活様式が定着してからこの傾向に拍車がかかった。意外に多いなと感じたのは腕時計の使用率で、3割以上の学生が身につけている、もしくは持ち歩いているという事実である。

上の話をすべて合わせて考えてみると、つながり(ソーシャル)、やりとり(メッセージ)、見た目(ファッション)の3要素を凝縮したApple Watchがこの世代に受け入れられない理由は、実はほとんどないのではあるまいか。いずれ解消されるであろう価格面を除けば、盤石といえる製品なのかもしれない。

春泥をまたもひらめくふくらはぎ    茶門

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