午後から武蔵美で3部構成のレクチャーをおこなう。2部目の「欧文書体の歴史」は吉富の担当。TPアプリコットを制作したデザイナー二人がこの学科の卒業生で、吉富はその一人にあたる。3時間の長丁場にもかかわらず、レクチャーが終わったあとも学生が熱心に話を聞きにきてくれて何より何より。

午後は多摩美で授業。前半は江戸の文化と文字についてレクチャー、後半は課題チェック。最後の個別相談がだいぶ長引いてしまったが、一対一でやり取りする時間の大切さを再認識できてよかった。

常用漢字の熟語シートに赤入れをおこなう。黒みがだいぶ落ち着いてきたので、漢字の制作人数を増やして次のステップに移る手筈を整える。九月尽。日中はまだ暑い時間帯があるが夕方になるとさすがに涼しい。夜になって学生から連絡が入る。展示パネル用のコメントが必要になったとのこと。すぐに400字を書いて送る。

本日TPアプリコットをリリース。制作したのは吉富ゆいと石川とも子。既成の書体カテゴリーに収まらない意欲的なデザインだが、実用性が高くて使いやすいフォントになっているはず。

猛暑が去って明らかに増え出した蚊の獰猛なこと。飢えて襲いかかるごとく。そして刺されると痒さに痛みが混じるほど。あちらは種を残すために必死だが、こちらも文字の種を蒔く準備で必死なのだ。

東京快晴。とろろ蕎麦を食べる。冷たい麺が美味しい季節もいよいよ終わりか。文字講義レポートの採点をおこなう。2年目の連続講義が終盤に近づいてきた。必修授業の難しさを今年も味わっているが、それだけに学ぶことが多いのも事実。念入りに準備を整えたとしても、学生の興味の持ちかた示しかたは十人十色、よほど目を凝らし耳を澄ませる必要がある。

タイポグラフィ方面で海外留学を検討している学生から相談があり、思い当たる人に声をかけて引き会わせる。想像以上にお互いに通じるところが多く共鳴し合っていたようで何よりだった。異なる美大をまたいで動ける身軽な立場も悪くないなと思いながら話を聞き焼酎を飲む。

次期リリース書体の仮名メトリクスの仕上がりを確認する。色々な使いかたが楽しめそうなファミリーだ。書体を作ったデザイナー本人が、その書体の一番の使い手であるのは好ましいことである。なぜなら、まっ先に改善点を見つけて直せるから。リリースした後、改善が必要な箇所を見つけるのもたいていは当のデザイナーだ。これは身に沁みる。改善のチャンスは皆無ではないが、成長した自分の力を次の書体に注ぐことを考えたほうがよい。

午後から上野毛で講義をおこなう。きょうは鎌倉時代から桃山時代に至る日本文化の流れと文字について。気温28度、湿度53%。からっとしていてじつに気持ちのいい天気。帰りの電車で席を譲られそうになり、笑顔で大丈夫です!と返したが、初めてのことで内心ショックを受けていた。

武蔵美視覚伝達デザインの講評会。時間をかけて丁寧に作ったものに佳品が多い。これは当然の結果かもしれないが、自分の手をつかう機会が減っているなかで、じっくり作品と向き合い、試行錯誤することがどれだけ貴重か自分に置き替えてみればわかる。

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